昆虫食の安全性
昆虫食は日本で古くから食されてきたほか、世界の一部の国においても昆虫食の文化は存在することから、決して人体に有害な食べ物ではありません。
また、2021年1月には、EUの規制当局が昆虫食に関して安全性を認める決定を下しました。このような背景もあり、世界では昆虫食を新たなビジネスとしてとらえ、生産拠点の拡大に取り組む企業も増えてきました。
ただし、エビやカニなどの甲殻類に対してアレルギーをもっている方の場合、昆虫を摂取することで健康への影響が懸念されることから、避けたほうが良いとしています。
また、必ずしもすべての昆虫が安全とは限らず、たとえばハエや蚊などの昆虫はさまざまな感染症を引き起こす存在としても知られています。昆虫食として用いられる生き物は、そのようなリスクを軽減するためにも、衛生管理の行き届いた環境下で飼育することが前提となります。
昆虫食が注目される理由
います。しかし、食糧の生産量がそれに追いつかず、穀物や野菜、食肉、乳製品など、あらゆる食糧が不足する可能性が指摘されているのです。
また、地球温暖化の影響によって異常気象が発生しやすく、天候不順によって記録的な凶作に見舞われる可能性も否定できません。農作物の収穫量が減るということは、人間が消費する穀物はもちろん、畜産動物の飼料も減少することを意味します。
たとえば、牛が1kg太るためには10kg程度の飼料が必要ですが、昆虫の場合はその5分の1以下の飼料で済みます。少ない飼料で効率的に動物性タンパク質を確保するための手段として、昆虫食が注目されているのです。
昆虫食の豊富な栄養素
食肉と同様、昆虫にも豊富なタンパク質が含まれています。生の状態では約20%がタンパク質にあたり、乾燥させ水分を蒸発させるとその比率は60%以上に達することも。
さらに、昆虫と食肉との決定的な違いは、脂質や炭水化物が少なくヘルシーな食品であること。また、鉄分やカルシウム、ビタミン、食物繊維なども豊富で、さまざまな栄養素がバランス良く含まれているのです。
昆虫食の課題
昆虫食の最大の懸念点は、その見た目やネガティブなイメージといえるでしょう。グロテスクな見た目と、「昆虫=不衛生」といったイメージが先行してしまい、拒絶反応を示す人も少なくありません。
地球環境に優しく、栄養価が高い食べ物だからといって、食欲をそそらないと食卓に並ぶことは難しいでしょう。
このような問題を解消するためにも、昆虫を乾燥させて粉末状にしたり、原型がわからないように加工したりして調理するなどの工夫が求められます。
環境問題を救う昆虫食
昆虫は畜産動物と異なり、生育に要する飼料や水、スペースも最小限で済み、効率的な生産が可能な食料といえます。
また、牛や豚、鶏などの場合、骨や皮などを廃棄しなければならず、可食部分は限定されてしまいます。しかし、昆虫の場合はほとんど捨てる部位がなく、廃棄物の量を減らせることも大きなメリットです。
このように、さまざまな面でメリットが大きいことから、近い将来昆虫食が当たり前の時代がやってくる可能性もあるでしょう。